症状固定について
Index
Q.症状固定とは/定義や具体的な内容について知りたい
Q.症状固定日とは/誰がどのように決めるのか知りたい
Q.症状固定とするとどうなるのか/治療費や休業損害などについて知りたい
Q.症状固定とするときの注意点は
主治医との関係 /症状固定日をいつにするか /等級の申請はだれがするか
Q.症状固定とは
A. 症状固定とは「傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したこと」をいいます。
交通事故で負傷した場合、負傷の程度は通常事故直後が最も重い状態です。そして、治療を続けていくにつれ症状は徐々に緩和していきますが、ある時期から治療を継続しているのに症状が一進一退の状態となることがあります。たとえば、治療を受けるとそのときは症状が楽になるけれども間もなく症状がぶり返すという状態です。そして、この状態が長期間を続くと見込まれる場合、医学上妥当と認められる期間経過後に症状固定とすることが実務上行われています。
また、症状固定という用語は純粋な医学用語ではなく、後遺障害の程度を評価する際の法的概念です。すなわち、損害賠償において後遺障害を金銭的に評価するときの法的な意味も併せもっています。
Q.症状固定日とは
A. 症状固定日とは後遺障害の程度を評価する基準日のことをいい、多くの場合医師に後遺障害診断書を書いてもらった日が症状固定日となります。
ただ、医師が被害者から求められてもいないのに勝手に後遺障害診断書を書くことはありませんし、また、損害保険会社が被害者の知らないところで医師に書いてもらうこともありません。被害者が医師に作成を頼んではじめて医師は後遺障害診断書を書くことになります。
よって、後遺障害診断書を書いてもらう時期つまり症状固定日は、被害者、主治医および損害保険会社の三者間でよく話し合って決めることになります。特に、主治医の意見は大変重要ですので日頃から主治医とはよくコミュニケーションをとっておくことがとても大切です。そして、被害者自身が十分に納得した上で主治医に後遺障害診断書の作成をお願いしてください。
後遺障害診断書を書いてもらうということは、症状固定とすることと同じ意味です。症状固定とすると、その前後でいろいろと異なってくることがありますので、被害者にとって症状固定がもたらす効果の十分な理解が不可欠となります。
Q.症状固定とするとどうなるのか
A. 症状固定日前については、休業損害、入通院慰謝料、治療費、通院交通費、諸雑費等を請求することができます。しかし、一旦症状固定とすると、これらの名目で損害賠償を請求することはできなくなります。また、症状固定後も治療を続けなければならない場合、それまで自由診療という扱いで治療をうけていたのであればすぐに健保診療に切り替える必要も出てきます。
症状固定日後は、主治医の後遺障害診断書をもとに後遺障害の等級認定を申請することになります。等級認定が得られれば、症状固定日以降は逸失利益と後遺障害慰謝料という名目で賠償を受けることができます。しかし、等級の認定がされないと(非該当といいます)症状固定日以降の損害を賠償請求することは大変難しくなります。
したがって、後遺障害の等級認定が得られるかどうかが大きな意味をもってくるのです。
Q.症状固定とするときの注意点は
A.主治医との関係
主治医とは日頃からよくコミュニケーションをとることが大切だと先に書きましたが、特に症状については詳しくかつ漏れなく伝えることが必要です。主治医が多忙との理由で話をよく聞いてもらえない場合もあるでしょうし、よく話を聞いてもらえたとしても患者の方で言い忘れることもあります。ですから、事前にメモなどを用意し主治医に渡すなどしてご自分の症状を主治医に十分に理解してもらえる工夫をしてください。
そして、メモは感情を抑えて客観的に要領よく書くことを心掛けてください。箇条書きにするとよいかもしれません。また、矛盾するようですが具体的に書くことも大切です。たとえば、痛みについてなら、痛みの程度がどのようなときに増すのか、痛みの持続時間が以前より長くなったとか、痛みのためにどのような動作ができなくなったなどを書きます。つまり、日常生活や仕事をするうえで事故前と比較してどのような支障が出てきたのかを具体的に伝えることが大切です。
また、メモはコピーなどして残しておけば、ご自分の症状の推移を把握することにもつながりますし、後に後遺障害診断書を書いてもらうときにも役立ちます。
A. 症状固定日をいつにするか
症状固定日をいつにするかは重要なテーマです。後遺障害の等級の申請との関係でいえばおおむね事故日から6ヶ月程度の期間が必要とされていますので、これより短い期間で症状固定とするのはあまりお勧めできません。
また、休業損害や治療費との関係でいえば症状固定の後はいずれも支払いがストップしますので、できるかぎり先送りしたほうが得策といえるかもしれません。
しかし、実際には症状固定を先送りしたとしても損害保険会社が一方的に治療費などの支払いをストップすることがあります。これは、損保が主治医に医療照会(治療内容や症状の推移などをヒアリングすること)をして会社独自の判断で症状固定とすることがあるからです。(注1)
こうなると、被害者は自身で治療費を払う以外にありません。(注2)
また、入通院の慰謝料も治療期間が長いほど多くなるのは事実ですが、長くなるほど慰謝料の増加額は少なくなっていきます。(注3)
ですから、損保が、事前に「症状固定について主治医と話をしていただけませんか」といった具合に打診してきたときは、主治医とよく相談のうえ医学上妥当と認められる期間を参考にして症状固定日を決めるのが現実的な対応ではないでしょうか。
先に、症状固定は損害賠償において後遺障害を金銭的に評価するときの法的な意味も併せもっていると書きました。賠償問題を解決するためには、つらいことですがどこかで区切りをつけ、あとは後遺障害の等級認定を得ることに力を入れる選択も必要でしょう。
(注1) 損保による医療照会の際に、主治医に適切な意見を述べてもらう意味でも、日頃から主治医とのコミュニケーションは大変重要です。
(注2) 示談交渉など(紛争処理センターでのあっせん、調停、訴訟)の中で、損保が判断した症状固定日が不適当であったとなれば後日治療費は支払われることになります。
(注3) 弁護士基準である赤い本によりますと、むち打ち症で通院した場合の通院慰謝料は、通院をはじめた最初のひと月は19万円ですが、1年通院するとそれからのひと月は1万円の増額にとどまります。
A. 等級の申請は誰がするか
等級の申請方法には二通りあります。ひとつは、被害者自身が申請するもの、もうひとつは、事前認定といって相手方の損害保険会社が示談するにあたり事前に後遺障害に該当するかどうかを調べるために申請するものです。
それぞれに、長所短所がありますが、できるだけ被害者自身が申請するほうがよいでしょう。
なぜなら、損保を通じて申請する事前認定の場合は、どのような医証(判断の基礎となる医学的な証拠)が集められているのかが被害者には分かりませんし、また、損保側の顧問医の意見書などがつけられる場合もあって被害者にとって必ずしも有利とならないケースがあるからです。